7. 法人契約の生命保険の活用
7.4 養老保険の活用法
養老保険は、貯蓄性の高い保険です。
保険料のほとんどは、死亡保障ではなく満期保険金として積立られます。
このため、基本的に損金にならないように税法でブロックされています。
しかし、養老保険を損金にできる方法はあります。
国税庁が法人税基本通達9-3-4で承認している、いわゆる「ハーフタックスプラン」と呼ばれる方法です。
「ハーフタックスプラン」に該当すれば、保険料の半分を損金にでき、かつ社員の給与扱いにもなりません。
「ハーフタックスプラン」は、法人にとって大きな効果があり、法人が養老保険を契約する場合、最適のプランです。
会社の節税対策として | 利益対策として、養老保険を活用できます。
想定よりも多く利益がでる場合には、対象となる養老保険を契約し、期末に年払いで保険料を支払えば、1/2を損金にできます。 |
会社が資金繰りに困ったとき | 事業を営んでいる以上、契約した後に資金繰りが苦しくなることは、あり得ます。
そのような場合には、解約返戻金を原資とした契約者貸付を受けることができます。 |
会社の利益確保の財源として | 取引先からの受注のため、あるいは借入金を安定的に受けるため、会社は黒字でなければなりません。
一時的な業績不振になっても、養老保険を解約して利益を捻出し、黒字化することが可能です。 |
社員の退職金の財源として | 社員の退職のタイミングに合わせて、養老保険を解約する方法です。
社員の退職金は毎年発生するものではなく、ある年に集中することがあります。 |
社員の万が一に備えることで、社員や家族の満足度を上げる | 社員に万が一があると会社も戦力を失い困りますが、社員の遺族は生活ができなくなる恐れがあります。
社員が安心して働ける環境を整えることにより、会社への忠誠心が高くなり、会社も繁栄します。 |
「ハーフタックスプラン」は、社員とその家族の生活の安定のため、国税庁により承認されたタイプですから、実に細かく要件が規定されています。
しかし、多くの会社で福利厚生制度として導入されていますが、加入時の説明が不十分で、損金計上の要件を満たしていないケースが良く見つかるようです。注意してください。
保険契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 満期保険金受取人 | 保険料の損金計上 |
法人 | 役員・社員※ | 役員・社員の家族 | 法人 | 保険料の1/2損金、1/2資産 |
- 社員の大半が同族関係者ではない会社であること
- 原則として全社員を被保険者とすること
ただし、「勤続3年以上に限る」といった合理的な基準による制限は許容されます。男性のみ、課長以上といった理由は合理的基準と認められないので、給与処理をしなければいけません。
死亡保険金受取人を法人、満期保険金受取人を役員・社員にしたもので、1/2は福利厚生として損金、1/2は給与として損金、つまり全額を損金とするプランです。
「逆ハーフタックスプラン」は、国税庁から判断基準が示されておらず、一部の生命保険会社のみ積極的に販売していました。 その関連判決が、平成24年1月16日に最高裁から出されました。
最高裁判決によれば、満期保険金を受け取った役員は、会社が支払った保険料全額を経費として控除したうえで一時所得として申告しましたが、最高裁は給与扱いとなった部分、つまり保険料の半分のみが経費であるとしました。
これまでの経緯をまとめると、
・1/2は福利厚生として損金、1/2は給与として損金、つまり全額を損金とすることは否定されていない
・途中解約による解約返戻金は、基本的に会社と役員・社員の折半受取りで、会社への戻りは少ない
・満期保険金についても、会社は受け取れないため内部留保できず、経営力の強化にはならない
・満期保険金を受取る役員・社員は、保険料の経費扱いが半分のため、役員・社員の所得税負担は重い
最高裁の判決により、「逆ハーフタックスプラン」の節税効果は減りました。
もともと、役員のみといった形態で加入している会社も多く、税務リスクは高いといえます。
今後、「逆ハーフタックスプラン」は下火になっていくかもしれません。